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造又は移転であるが、具体的に施設のどの部分をどのように「修理し、改造し又は移転すべきか」を指摘する必要があり、また、期限を指定して文書で行うべきことはいうまでもない。
命令の内容は、安全を確保するために必要最小限度とすべきであり、修理を命ずれば足りるところを改造を命ずるなど、警察比例の原則に照らし過大な内容の命令は違法となる恐れがあるので注意を要する。
また、命令を履行すべき期限の指定にあたっても、命令の内容を履行し得るに十分な期間を客観的根拠に基づき算定し、命令事項を履行するに可能な期間を期限として指定する必要がある。
(三)命令に伴う改修等
?@命令に基づく改修等
この命令により危険物施設の位置、構造又は設備の改修、移転等をする場合は、当該危険物施設の変更許可、完成検査等を必要とする。また、この改修等は危険物施設の所有者等に課された当然の社会的制約であるから、市町村長等が補償する必要はない。
?A命令違反等
この命令に違反して危険物施設の位置、構造又は設備の改修等を怠った所有者等に対しては、当該危険物施設の使用停止命令等が発せられることがある。
また、行政代執行により市町村長等自らが代わってその命令を執行することは可能である。しかし、罰則の適用はない。
四、 許可の取消処分
消防法第一二条の二第一項は、消防法第一一条第一項の許可の取消又は使用停止命令ができる要件として次の五つの要件をあげている。
(一)許可を受けないで、危険物施設の位置、構造及び設備を変更したとき。
(二)完成検査の前に危険物施設を使用したとき。
(三)危険物施設の位置、構造及び設備の基準維持命令に違反したとき。
(四)保安検査の規定に違反したとき。
(五)定期点検の規定に違反したとき。
許可の取消処分とは、行政法上は処分のあった日から将来にわたり許可の効力を消滅させることであるので、講学上の許可の撤回にあたる。この処分は、すでに与えた法律上の地位を剥奪するものであり、当事者たる市民にとって重大な不利益処分である。このため、法は処分を行おうとする危険物施設の関係者に対し、処分の理由の通知と弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならぬことを規定し、関係者の利益の保護を図っている。また、本条の要件に該当した場合、市町村長等は許可の取消処分又は使用停止命令がなし得ることとなるが、そのいずれを命ずるかは市町村長等の裁量にもとづく判断に委ねられている。しかし、裁量とは言っても、その判断にあたっては法の適用の諸原則により行う必要があるため、裁量の幅は限られている。
一例をあげれば、警察比例の原則によれば、命令内容は必要最小限度である必要があり、使用停止命令により安全が確保できるのであれば許可の取消処分を行う余地はない。使用停止命令によっては安全確保が困難である場合に許可の取消処分が問題となるが、そのようなケースはそう多くはないはずである。
例えば、許可を受けないで危険物施設の位置、構造及び設備を変更して使用している場合で、かつ、当該危険物施設の位置等が消防法第一〇条第四項の技術上の基準に照らし、著しく不適合であり、改修等により適法な施設とすることが困難な場合などで、関係者に改修等の意思が認められない場合などは、許可の取消処分が認められよう。

 

 

 

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